コラム

医療機関等の経営統合について

2018.09.13

昨今、医療機関等を取り囲む経営環境は以前にも増して激化しています。中長期的に経営を安定的に維持するための戦略の一環として自らの経営基盤の強化目的で医療機関等が他の医療機関等を経営統合するといった事例や医療機能の再編を目的とした経営統合事例が見受けられます。最近では、相続・事業承継対策といった目的による実行も耳にするようになりました。

1.医療機関等における経営統合の類型

医療機関等では、株式会社のような民間企業とは異なり出資や配当といった行為に制約があり、また、通常、資金調達は金融機関等(独立行政法人福祉医療機構も含む)からの融資によります。そのため、経営統合の手法も民間企業と比較して限定されることとなります。

医療機関等において、主に想定される経営統合手法としては以下のものが挙げられます(平成28年9月までは① 、②の手法のみでした)。下記表以外に、業務提携(例えば、共同購買提携や医師等の人材派遣等)や出資を伴わない系列化、出資持分譲渡の経営権の移動等があります。

経営統合の主な種類 内容
①合併 合併とは、2つ以上の医療機関等が法定の手続によって行われる医療機関等相互間の契約によって1つの医療機関等になる経営統合手法です。都道府県知事への認可の申請や債権者保護の手続が必要となります。
大きくは、吸収合併と新設合併に区分され、双方とも、合併により消滅する医療機関等の権利義務の全部を合併後に存続する(又は新設する)医療機関等に包括承継されます。
②事業譲渡 一部の事業の資産及び負債を特定させて他の医療機関等に譲渡する経営統合手法です。
譲渡資産や負債を特定させるため、合併と異なり簿外債務を継承することは通常ありえません。
一方、譲渡側の病床等の許認可要件を譲受側でも満たすかどうか、都道府県等の行政との事前の密な折衝が必要になってきます。
③分割 分割とは、法定の手続によって行われる医療機関等相互間の契約であり、事業に関して有する権利義務の一部が他の存続する医療機関等や新設の医療機関等に移転する効果をもつ経営統合手法です。都道府県知事への認可の申請や債権者保護の手続が必要となります。
事業譲渡との違いは、分割は契約関係の移転が包括的にできるため手続が煩雑にならずにすむ点と、一定の要件(税務上の適格要件)を満たせば税務上の恩典を享受できるという点にあります。
平成28年9月から可能になった手法ですが、社会医療法人や持分の定めのない医療法人等の一部の医療機関においては、分割制度の対象とすることはできません。

2.合併における税務上の留意点

上記経営統合手法の中でも、多数の事例が見受けられる合併について留意点をみていきましょう。
経営統合を実施する際、統合におけるシナジー効果や医療機能の再編、人事交流等検討すべき論点は山積ではありますが、とりわけ注意すべき論点の一つとして税務が挙げられます。

合併時の税務の論点としては、①資産が移転する際の移転譲渡損益課税の可否、②繰越欠損金の引継ぎの可否、③出資者の譲渡所得課税・みなし配当課税の可否等が想定されます。これら、適格合併に該当する場合は、課税が発生しません。

適格合併に該当するかどうかは、持分の定めのある医療機関か持分の定めのない医療機関かによって税務上の恩典を享受できるための要件が異なるため、注意が必要であります。

ポイント
  1. 医療機関等の経営戦略の一つに経営統合が考えられ、主な経営統合手法として合併、事業譲渡、分割が挙げられます。
  2. 合併、事業譲渡、分割の経営統合手法には、各々メリットとデメリットがあり、それを踏まえて手法の選択を判断する必要があります。

執筆者:公認会計士 横田昌和

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