コラム

会計視点からみた医療機関等の未収金問題

2019.01.07

昨今、医療機関等を取り囲む経営環境は以前にも増して激化しています。このような環境下において、医療サービスの提供により発生した未収金の適切な回収は、医療機関等の資金繰りにも影響を与えることから重要な経営課題といえるでしょう。

過去にも厚生労働省で「医療機関の未収金問題に関する検討会」が平成19年から平成20年にかけて検討されており、また、四病院団体協議会が平成21年に未収金発生防止マニュアル及び回収マニュアルを作成しております。業界全体で当該問題に対して検討がなされ、これを読まれている皆様の勤務されている病院においてもすでに何らかの形で取り組まれていることと思います。

1.医療機関等で発生する未収金の分類

医療機関等の未収金は、主に以下の業務過程で発生するものと考えられます。これら一括りに回収すべき”債権”ではありますが、回収する相手先の属性や発生原因が異なるため、各々の未収金の特徴があります。これらの発生原因の中では、一般的には診療報酬請求による未収金が大半を占めるものと考えられます。

発生原因 内容
(a)窓口の精算
(いわゆる窓口未収金(患者未収金))
①入院患者の入院医療費に対する未収金
②通院患者の外来医療費に対する未収金
③夜間・休日受診の預り金処理における未収金
④緊急受診の医療費に対する未収金
一般的に未収金問題として債権評価(回収可能性)の論点となる未収金は、窓口未収金です。
(b)診療報酬請求等 社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会の審査支払機関に対して月末締め翌月10日までに請求し(請求時に未収金計上)、審査を経て診療した月の2ヶ月内に支払いを受けます。
自賠責保険の請求の場合、通常、損害保険会社に対して請求を行います。診療報酬請求による回収と異なり、いつ入金されるかは状況により変わってきます。
(c)保留レセプト 審査支払機関に対する請求に必要な書類が整っていない場合や患者の保険種別等が確定していない場合、未請求であったとしても診療行為はあるため債権の計上を行います。
通常の診療報酬請求と同様に診療月に未収金計上を行い、翌月これを洗い替えするといった収益が重複して計上されることを回避する処理が必要となります。

2.診療報酬請求における減額査定・返戻等の処理

”(b)診療報酬請求等”において、審査支払機関により減額査定や返戻等の判断がなされると、保険請求額から減点分や返戻分が差し引かれて入金されます。この請求額と振込額との差額については、決定通知到着時において保険等査定減(収益の控除項目)又は返戻の処理を行います。

返戻は主に形式的な誤りによるもので、医療機関等では返戻台帳等を備え早期の再請求に努めます。返戻と査定減は、院内保険委員会等において情報共有するとともに、返戻理由コード管理、査定率管理、早期請求のため医事課と担当医師の連携が重要です。

 

査定項目 一般的に想定される会計処理(仕訳は一例です)
減額査定 減額査定とは審査支払機関が請求を不適当と判断し当該項目を修正することです。査定の通知を受けた時点で未収金を取崩し保険等査定減という収益の控除項目を計上します。そして、再請求を認可された時点で未収計上を行い先程計上した保険等査定減を取崩します。
①請求時:(借)医業未収金 100 (貸)社会保険請求収入 100
②査定時:(借)保険等査定減 20 (貸)医業未収金 20
③再請求認可時:(借)医業未収金 20 (貸)保険等査定減 20
返戻 返戻とは審査支払機関では医療行為の適否を判断することが困難であったため、レセプトを差し戻すことです。一般的にはレセプトが返却された時点で、収入と未収金を減額させます(この減額処理を失念すると、売上高の二重計上となってしまいます)。そして、再請求時に再度未収計上を行います。
再請求によりいずれは入金されるかもしれませんが、入金が通常より後日になるため資金繰りの面で影響を受けます。
①請求時 :(借)医業未収金 100 (貸)社会保険請求収入 100
②返戻時 :(借)社会保険請求収入 20 (貸)医業未収金 20
③再請求時:(借)医業未収金 20 (貸)社会保険請求収入 20
今回のポイント
  1. 発生原因別に未収金を分類すると、各々の未収金の特徴があります。一般的に未収金問題として債権評価(回収可能性)の論点となる未収金は、窓口未収金です。
  2. 診療報酬請求における返戻は、返戻時に収入とともに未収金を減額させることが必要です。再請求によりいずれは入金されるかもしれませんが、入金が通常より後日になるため資金繰りの面で影響を受けます。

執筆者:公認会計士 横田昌和

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