コラム

会計視点からみた医療機関の未収金問題-2

2019.02.15

前回のコラムでは、医療機関で発生する未収金を発生原因別に分類しました。今回は、その一つである窓口未収金(特に外国人未収金問題)に関して検討を行いたいと思います。

医療機関で計上される未収金の大半は診療報酬請求に係るものでありますが、これは通常起こり得る業務フローの中で発生するものであるため一般的には回収可能性に問題が生じるものではありません。窓口未収金は発生原因を踏まえると回収可能性に関して問題を生じるものが多く、会計上、債権評価の論点になりやすいといえます。

1.訪日外国人に係る未収金問題

窓口未収金の発生原因には幾つかありますが、うち、患者が経済的に困窮している等の理由から生じている債権は、本来回収すべき医療サービスの対価が回収不能に陥ることになる可能性が高く、会計上も貸倒引当金の計上の論点としてなりやすいものであります。

昨今では、窓口未収金について上記とは別の発生原因が注目を集めており、それは日本を訪れる外国人観光客(以下、訪日外国人)によるものです。訪日外国人は、2012年では約8百万人、2017年では約28百万人と4倍以上に増加しています。訪日外国人が短期間で急激に増加したことにより、彼らにより発生した医業未収金に対する回収懸念における論点がでてきています。

これは、医療機関の受入側の問題(言語の対応、決済方法の対応等)や訪日外国人自体の問題(保険の加入の可否、支払余力、モラルハザード等)といった要因が考えられます。

2.現状の行政等の動き

現在、行政の動きとしては関係府省庁が連携して、健康・医療戦略推進本部の下に「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」を設置して検討が図られています(平成30年4月及び6月に開催)。

ワーキンググループでは、”訪日外国人自身の適切な費用負担を前提に、安心して医療を受診し、安全に帰国できる仕組み構築”ができるよう、以下の環境整備(抜粋)を進めようと議論がされています。これらは、医療業界として回収懸念債権自体を低減させていこうという取り組みです。
①旅行保険加入勧奨(現状、3割は旅行保険は未加入者とのこと)
②医療費不払い実績者に対する入国審査の厳格化
③入国者に対する医療に関する正確な情報発信
④外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)の策定及び情報発信
⑤医療通訳やICTツールを活用した多言語対応及びこれらの人材育成
⑥円滑な医療費支払の支援
⑦医療機関や都道府県向けマニュアルの整備(例えば、医療機関の窓口ではパスポートの提示を求めたり、診療開始前に想定される価格を説明するといったこと)
⑧訪日外国人に対する応召義務の考え方の整理と関係者への周知
⑨医療紛争の防止に向けた取り組み
⑩地域における対策協議会設置

3.会計上の対応

上記は、いかに回収懸念債権を医療業界として減少させていくかというリスク低減の取り組みです。しかし、それでも何割かは回収懸念とされる債権は発生するものです。(例えば、大手保険会社では入国時に、通訳、提携医療機関をセットした保険加入を促進させ販売しています。医療機関としてはこれと提携し、保険に加入した訪日外国人を外来で診るという方法が考えられますが、救急搬送の場合で受け入れた場合どうしようもありません。)

会計上の処理については、訪日外国人で発生した回収不能債権であったとしても従来の回収不能債権と同様、会計処理の考え方は同じです。医療機関で発生した債権に関しては、経理規程や債権評価マニュアル等のルール(これらルールの整備は必要です)や医療法人会計基準等の会計基準に照らし合わせ、債権区分をして債権区分に応じた形で貸倒見積高の算定(貸倒引当金や貸倒損失の計上)を行っていくことになります。

執筆者:公認会計士 横田昌和

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