コラム

会計視点からみた医療機関の未収金問題-3

2019.03.12

前回のコラムでも記載しましたが、医療機関で計上される未収金の大半は診療報酬請求に係るものであり、一般的には回収可能性に問題が生じるものではありません。ところが、以下の減額査定や返戻といった事項が起こると、通常、回収できる時期に未収金が回収することができなくなります。

1.診療報酬請求における減額査定・返戻等の処理

診療報酬請求において、審査支払機関により減額査定や返戻等の判断がなされると、保険請求額から減点分や返戻分が差し引かれて入金されることとなります。この請求額と振込予定額との差額については、決定通知到着時において保険等査定減(収益の控除項目)又は返戻の処理を行います。
返戻は主に形式的な誤りによるもので、一般的に医療機関では返戻台帳等を備え早期の再請求に努めているものと思います。返戻と査定減は、院内保険委員会等において情報共有するとともに、返戻理由コード管理、査定率管理、早期請求のため医事課と担当医師の連携を図られることが重要となってきます。

査定項目 一般的に想定される会計処理(仕訳は一例です)
減額査定 減額査定とは審査支払機関が請求を不適当と判断し当該項目を修正することです。査定の通知を受けた時点で未収金を取崩し保険等査定減という収益の控除項目を計上します。
①請求時:(借) 医業未収金 100 (貸)社会保険請求収入 (*)100
②査定時:(借)保険等査定減 20 (貸)医業未収金 20
返戻 返戻とは審査支払機関では医療行為の適否を判断することが困難であったため、レセプトを差し戻すことです。一般的にはレセプトが返却された時点で、収入と未収金を減額させます(この減額処理を失念すると、売上高の二重計上となってしまいます)。そして、再請求時に再度未収計上を行います。
再請求によりいずれは入金されるかもしれませんが、入金が通常より後日になるため資金繰りの面で影響を受けます。
①請求時 :(借)医業未収金 100 (貸)社会保険請求収入 100
②返戻時 :(借)社会保険請求収入 20 (貸)医業未収金 20
③再請求時:(借)医業未収金 20 (貸)社会保険請求収入 20

(*)本来、収益科目は外来診療収益等の科目名になるかと思いますが、説明のために便宜的に当該名称を使用しています(他の仕訳も同様です)。

2.保留レセプトの管理

保留レセプトの場合、未請求であったとしても診療行為はなされているため債権の計上を行います。そして、収益が重複して計上されることを回避するために、翌月これを洗い替えする処理が必要となります(他の会計処理の方法もありますので、会計処理は一例です)。
ここで大事なことは、各担当者の判断で保留レセプトの処理を行い、結果として管理が不充分な状態にあることは回避すべきです。いつどの内容で発生したかがわかる保留レセプトの管理簿を作成して、定期的にモニタリングすることが大事です。

減額査定、返戻や保留レセプト等といった原因により請求額と入金額とは必ずしも一致するわけではありませんので、入金差額を分析し不明差異がないよう管理することが必要です。

今回のポイント
  1. 診療報酬請求における返戻は、売上高の二重計上とならないよう、返戻時に収入とともに未収金を減額させることが必要です。また、返戻は、再請求によりいずれは入金されるかもしれませんが、入金が通常より後日になるため資金繰りの面で影響を受けます。ですので、当初の請求段階から返戻とならないようチェックする体制の構築をすることが重要です。
  2. 請求金額と入金額は必ずしも一致しません。この入金差額の原因となる内容を定期的にモニタリングしていく体制をとることは、経営管理上重要であると考えられます。

執筆者:公認会計士 横田昌和

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